2008年12月16日火曜日

世紀最大の詐欺事件

米国で50年の歴史を誇る老舗証券会社の経営トップによる史上最大規模の大型詐欺事件が発覚、金融危機に苦しむ米金融界を激しく揺さぶっている。被害総額は最大で500億ドル(約4兆5600億円)に上るとの見方もあり、米証券取引委員会(SEC)など監督当局に対して監視機能の欠如を批判する声が聞かれる。

 米連邦捜査局(FBI)は12日までに、詐欺の疑いで、中堅証券会社社長、バーナード・マドフ容疑者(70)を逮捕した。マドフ氏は1960年に証券会社を創業、米株式市場のナスダックを運営するナスダック・ストック・マーケットの会長を務めた経験もあるウォール街の名士だ。

 自身で設立したヘッジファンドを舞台に90年以降、年間平均10.5%という高利回りを掲げて投資家を引きつけた。実際はほとんどまともに資産運用をしておらず、資金をそのまま“配当”に回す典型的な「ねずみ講」の手口だったという。

 少なくとも数百人の個人投資家に加え、投資ファンドなどのプロも被害を受けたとされる。ただ、市場関係者の間でマドフ氏のファンドについて「あまりに長期間高利回りを維持しており不自然」(米金融関係者)とささやかれていた。

 SECは99年に取引に疑問があるとの訴えを受けていたが、本格的な調査は実施されなかった。ヘッジファンドが管轄外だったためとみられる。投資家保護問題の専門家は「当局の監督体制に不備があったといわざるを得ない」と指摘、ヘッジファンドに対する監視強化を求める。

 マドフ氏は最近、証券会社の幹部の息子に「すべて詐欺行為だった」と告白。FBIなどは今後、資金の流出先などを解明し、投資家への資金の返還を図る方針だ。(共同)

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 NASDAQ(ナスダック) 1971年に全米証券業協会(NASD)の主催で米国に開設された世界最大の新興企業(ベンチャー)向け、かつ世界初の電子株式市場。日本でも2000年に大阪証券取引所と提携した「NASDAQ JAPAN」(ナスダック・ジャパン)市場を開設したが、24時間取引の是非やシステム上の問題なども絡み、2002年12月に提携を解消した。